▼「クリスマスケーキの予約承ります」。そんな文字を目にする時季になった。ついこの間まで夏だったのに、とつぶやきたくなるほど、秋はどこか駆け足に過ぎていく
▼昨年は気付くのが直前になってしまって諦めたので、今年は早めに店舗へと向かった。ケーキではない。クリスマスに贈る本を買うためである
▼さまざまな事情で苦しい境遇にある子どもたちに書籍を届ける取り組み「ブックサンタ」。「あなたも誰かのサンタクロース」を合言葉に活動するNPO法人チャリティーサンタ(東京都)が、書店と連携して2017年に始めた。協力する店舗は現在、全国に約1700店、県内にも30店ほどある
▼どんな本が喜ばれるだろう。団体のホームページに載っているアドバイスやオンライン注文用のお薦めリストを頭に入れたものの、普段は縁のない児童書のコーナーで、ずいぶん迷ってしまった
▼本にはたくさんの魅力が詰まっている。ページをめくるたびにワクワクしたり、今いるのとはまったく違う世界を知ったり、怒ったり悲しんだり、いろんな気持ちを体験できる。子どもたちにもそんな楽しさを味わってほしい
▼悩んだ末に、文字の少ない仕掛け絵本2冊と、自分が小学生の頃に夢中になった長編の物語を選んで、店に寄付した。クリスマスに誰かの手元に届くのを想像すると自然と頬が緩む。うれしいのは、贈る側も同じであった。